考えることについて考えてみる初冬/松井宏次

転勤族だった勤め人時代、6年ほど四国でも仕事をしていました。「京都のように赤い紅葉って、こっちには無いよ」ってしばしば聞きました。京都に戻ってみると、なるほど紅葉の名所と言われるところは、赤が見事。
確かに映える赤。でも、木々が色づくときに突然姿をあらわす大きな銀杏の黄色もいいなってこの時期思います。

アルファベットスープ。溢れかえるアルファベットを並べた英略語を揶揄するこの言葉に出会ったのは'90年代だったでしょうか。そんなことを思っていると、たまたま目に止まったひとつが、こちらhttps://42-54.jp/20180303001/
「IT業界のアルファベットスープなんぞまだ可愛いもので、経営の話になってくると『これこそが本命だ!』と断言した“理論もどき”が次から次と繰り出される」
とあります。ごもっともなコメント。 もっとも「考えかたの枠組み、フレームワークとして提唱したのであって、理論だなんてもともと言ってない」という声が聞こえて来そうでもあるのですが。

ところで、経営に関する論がさまざまにあるとともにで、事業の現場での、問題の発見や課題の設定、解決 のために使われる手法もいろいろです。こちらは理論ではなく手法。
振り返ってみると、古くからの手法の中で使い続けている定番が自分にもあります。例 えば、PQCDSM、4M、4P、3C。 自ら現場に関わるときでも、あるいは、どなたかから相談を受けたときの対応でも、今 なお有効です。もちろん、やおら、ではPQCDで、だとか、4Pは、だなどと、用語を持ち出したりはしませんが、整理する切り口として使います。今では現場に溶け込んだ常識ということなのかも知れないですね。

枠組み、フレームワークであれ、切り口であれ、考え方の手立てを用いるとき、そこには、何らかの概念があります。P Productivity、Q Quality 生産性などです。具体的な事象について、いったん抽象度を上げることで捉えなおしています。
例えば、製品に対してだけでなく、店舗や工場といったものについて解決すべき課題を見つけようとするときでも、私たちは、何らかの概念を用います。その多くは抽象度の高い概念です。抽象度を上げて概念を当てはめて考え、また現実の現象にまで落とし込むという繰り返しがそこにあります。

この繰り返しのプロセスを意識して、課題を整理する方法もあります。抽象化による事象の整理です

この図は、ベーカリーの次の展開を考えるにあたって考えている整理の途中のものです。店頭販売もイートインも概念に違いないのですが、概念ありきではなく、強いて具体的なものや事柄から抽象度を上げていくことに焦点をあてる演習のひとこまでの図です。

概念を学び、概念をあてはめて考えることは、もちろん有効ですが、例えば、概念があてはまったことで、そこで思考を止めてしまうことがあります。「それは戦略だ」「これはエシカルだ」とあてはめたことで解ったつもりになる弊害は、しばしば指摘されることです。そこまでで思考が止まってしまいがちになります。抽象度に焦点をあて、抽象と具象を行き来きを大切にする。それを意識して行なってみることが、そうした思考停止をなくすことにも役立ちます。



■執筆者プロフィール

松井 宏次(まつい ひろつぐ)

ITコーディネータ 中小企業診断士 1級カラーコーディネーター

健康経営アドバイザー

焚き火倶楽部京都 ファウンダー