2021年のSNS活用/ 積 高之

 企業や店舗にとって欠かすことのできない顧客コミュニケーションツールとなったSNSも、さまざまな意味で変化してきました。今回のコラムでは、そんな変化について考えてみましょう。

  日本で最初にSNSが流行ったのはTwitterですが、当時そのきっかけになったのは「東日本大震災」と言われています。(1)

 Twitterの利用者は、まずは地震による揺れや被害の状況についてツイートし、家族や友人の安否を確認していました。東北など被害が甚大だった地域では、避難所の情報や救助要請などのツイートがありました。 関東圏など交通機関が麻痺した地域では、帰宅が困難な人向けの避難所や運行再開状況などの情報が交換がされていました。 地震発生から少し経つと、フォロワー数の多い利用者が援助物資についてのツイートや助けを求めるツイートを拡散し、寄附や節電を呼びかけるツイートも広まりました。情報伝達のソーシャルメディアとして、Twitterが大きな役割を果たした瞬間でした」(Twitter 事業開発担当の松野ショーン氏)

 筆者も当時品川で夜を明かしましたが、携帯もメールもまったく役に立たない状況で、京都の家族と連絡を取るためには、Twitterが大変、役にたったことを覚えています。(実はその前に携帯電話が普及した背景には「阪神淡路大震災」があったことも覚えています。それまでまだまだ町中に多かった公衆電話が、こんな時に使いものにならないと言うことを知りました)

 

 生活習慣やインフラが、大災害をきっかけに変わることは物理的にも心理的にも起こり得ることだと思います。現在のコロナ禍はそれが1年半以上続いているのですから、何らかの変化が起きても不思議ではありません。

 まず顕著なのは「広範囲な繋がり」です。矛盾するようですが、物理的に会わないことにより、広範囲で人と付き合ったり、店舗や企業を選ぶようになりました。昨年の半ば以降の数ケ月を除き、ほとんどの期間を在宅で過ごさざるを得なくなった人々は、zoomなどでのオンライン上でのつながりを覚えました。それまでオンラインでつながると言えば、メールやチャットなどでテキストベースが主流だった関係は、動く相手を見ることでずいぶんとつながった気がします。これまで、実際に対面で会うとなると、いろんな手間がかかってきたことが、さっとカジュアルに済まれるようになってきました。こうなってくると「誰と会うか」の選択肢が増え、そのためには「この人はこういう人」というラベリングを、他人に対して行う必要ができてました。自分側から見ると「私はこういう人である」ということを少し広い範囲で伝える必要があり、「会社」や「学校」「近隣」といった物理的な位置関係ではなく、「興味」「関心」や「スキル」などによって、他人とのつながりを選択するようになってきたわけです。

 

 顧客が商品を買うという選択肢も、広範囲に及ぶようになりました。ネットショッピングの世帯経験率は50%を超え(2)国内での通販利用はもうあたり前で、一部では中国や米国から商品を購入している人も珍しくありません。もちろん越境ECも盛んで(3)ECにおいては国境を超えるハードルはずいぶん低くなってきました。人も企業も「物理的にはほとんど知らない人」の中から選ばれる必要が出てきたわけです。(個人としては別に「選ばれる」必要はないかも知れませんが)

 

 人なり企業なりをゆるく広範囲に知ってもらうにはSNSは有効です。しかも一部メディアの偏りがあるとは言え、世界中に伝わります。Facebookは「ゆるい連携」を促すツールとして「グループ」や「メッセンジャーグループ」の活用が目立ってきました。企業や店舗は自分のサービスや商品を直接売り込むのではなく、そもそもその潜在顧客である人達にゆるくリーチしておくために「グループ」を使うと有効です。また、個人はメッセンジャーを使ってコミュニケーションを使いますが、そのつながりにはメッセンジャーグループが盛んに作られています。LINEグループよりゆるい関係でのつながりとも言えるので、企業や店舗でも活用できるでしょう。Instagramは世界とつながるようになってきました。日本で起業して日本市場からステップアップするわけではなく、最初から海外市場を狙いに行くことも、Instagram+Shopifyで簡単に実現できるようになりました。

 

 2020年に変わったこの潮流を早めに掴んで、ビジネスや自分のキャリアをアップデートしましょう。

 

(1)https://signal.diamond.jp/articles/-/614 

(2)https://www.stat.go.jp/data/joukyou/pdf/n_joukyo.pdf

(3)https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf

 

 


執筆者プロフィール


積 高之
デジタルマーケティングコンサルタント
seki@sekioffice.jp
https://lit.link/kyotosekioffice


京都積事務所 代表
株式会社リリク シニアコンサルタント


関西学院大学専門職大学院 先端マネジメント研究科(後期博士課程)在学中
経営管理修士(MBA)
チーフSNSマネージャー・上級SNSエキスパート・上級ウェブ解析士・ITコーディネータ


広告・ブランディングの職務を経験後、コンサルタントとして独立。
大手子供服SPA,酒販小売業チェーン、保険代理店などの顧問・コンサルタントを歴任。現在契約中の顧問先は30社以上。ITだけでなく小売業・広告業の実務経験を通じ、リアルビジネスのマーケティングをベースにしたコンサルティングを行っています。


日本マーケティング学会
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